上場企業は1%未満
——BtoB営業の母集団は非上場・小規模にある
営業のKPIや施策の型は、上場企業や大手企業を想定した海外の事例から輸入されがちです。しかし、当社が保有する国内企業データベース(約75万社)を集計すると、上場企業は全体の1%未満、従業員20人未満の企業が約半数を占めていました。営業の母集団を「名の知れた企業」で想像していると、実際に営業をかける相手の大半を最初から見落とします。この記事では、母集団の実像を3つの表で確認し、取り違えを避けるための判断基準を整理します。
上場企業は1%未満——母集団のほとんどは非上場企業
結論から言うと、当社データベースに収録された企業のうち、上場企業は約4千社です。約75万社に対して1%未満にとどまり、残りは非上場企業です。
| 区分 | 社数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 上場企業 | 約4千社 | 1%未満 |
| 非上場企業 | 約75万社弱 | 99%以上 |
上場企業は決算や採用の情報が広く出回るため、営業事例や海外ベンチマークもそこを前提に語られやすい層です。一方、営業リストの大半を占める非上場企業は、公開情報が少なく、勢いのある企業かどうかも外からは判断しにくい層です。この違いは、ICPの作り方で扱う「どの公開情報を条件に使えるか」にも直結します。
従業員規模で見ると、約半数が20人未満
規模の分布を見ると、母集団の重心はさらに小さい側にあります。従業員20人未満だけで約40万社、全体の約半数です。
| 従業員規模 | 社数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 20人未満 | 約40万社 | 約半数 |
| 20〜100人未満 | 約14万社 | 約2割 |
| 100〜1000人未満 | 約5万社 | 1割未満 |
| 1000人以上 | 約5千社 | 1%未満 |
| 従業員数の登録なし | 約16万社 | 約2割 |
従業員数が登録されていない企業が約2割あるため、割合は約75万社全体に対するものです。従業員数が登録されている企業だけで見れば、20人未満の比重はさらに高くなります。
この分布は、従来の営業リストの考え方にも影響します。営業リストの作り方を検討するとき、「従業員100人以上」「上場」といった条件を無意識に置くと、母集団の大部分を外した状態で件数を見積もることになります。
営業職を募集している企業の比率は、規模で大きく違う
母集団の重心が小規模側にあるのに対して、営業のシグナルとして使いやすい「営業職の募集」は、規模が大きい側に偏って見えます。規模別の母集団のうち、営業職を募集している企業の比率が下の表です。
| 従業員規模 | 営業職を募集している企業の比率 |
|---|---|
| 20人未満 | 1割未満 |
| 20〜50人未満 | 約10% |
| 50〜300人未満 | 約20% |
| 300〜1000人未満 | 約30% |
| 1000人以上 | 約40% |
20人未満では1割に満たず、1000人以上では約4割と、規模が上がるほど比率が高くなります。ただし、これを「小規模企業は営業を強化していない」と読むのは早計です。当社の採用シグナルは、リクナビNEXT・マイナビ転職・エン転職という3つの転職媒体への掲載から取っています。小規模な企業ほどこれらの有料媒体を使わず、別の手段で採用している可能性があります。つまりシグナルが出ていないのではなく、シグナルを取れる場所に出ていないのかもしれません。
採用や資金調達のようなシグナルから営業先を選ぶ方法は、大きめの企業に偏って見えやすい。母集団の約半数を占める小規模企業は、シグナルの有無ではなく、別の切り口で当てにいく必要があります。
なお、表は従業員数が登録されている企業を分母にした概算です。営業職の募集を業種別・規模別に数えた内訳は、別の記事で詳しく扱います。
海外ベンチマークを国内の母集団にそのまま当てはめない
母集団の実像は、ベンチマークの読み方にも関わります。The Bridge Groupが2025年に公表したSDR(営業開発担当)の調査は、B2B企業351社を対象にしていますが、同レポート自身が、標本は営業開発の組織づくりに積極的な企業に偏ると注記しています。また、サブグループごとの比較は「確定的ではなく方向性を示すもの」としています(The Bridge Group「2025 SDR Models & Metrics Report」)。
この調査で、企業規模ごとの違いとして確認できる数字は限られますが、たとえばSDR組織を率いるリーダー1人あたりの担当人数は、売上500万ドル未満の企業で3.6人、5億ドル以上の企業で8.1人と、規模によって組織の形そのものが異なります。
| 企業規模(売上) | リーダー1人あたりのSDR人数 | 出典 |
|---|---|---|
| 500万ドル未満 | 3.6人 | The Bridge Group 2025(351社) |
| 5億ドル以上 | 8.1人 | The Bridge Group 2025(351社) |
SDR専任の組織を持つこと自体が、国内では従業員20人未満が約半数の母集団と大きく異なる前提です。KPIの数字は、SDRのKPI、世界標準はどこかのような調査を参考にしつつも、自社の顧客と同じ規模帯の分布で読み替える必要があります。
母集団を取り違えないための3つの判断基準
ここまでの実測から、営業の設計で最初に確認しておきたい点を3つに絞ります。
- 自社の受注先の規模分布を、母集団の分布と並べる——過去の受注先が従業員何人の企業だったかを集計し、上の表と比べます。受注の大半が100人未満なのに、リストの条件が100人以上になっていないかを確認します。
- 小規模企業には、シグナルより到達手段を先に設計する——採用や調達のシグナルが取れにくい層には、代表電話が取れない場合の部署直通の電話番号のように、実際に届く手段があるかどうかを先に確認します。
- 海外のKPIは、規模帯を合わせて読む——1日の活動量や商談ノルマは、SDR専任チームを前提にした数字です。少人数で兼務する体制なら、そのまま目標に置かず、自社の体制に合わせて割り戻します。
母集団の約半数が20人未満で、上場企業は1%未満。この前提に立つと、「大手向けの型を小さく縮める」のではなく、「小規模の企業に届く設計を最初から組む」という発想が必要になります。
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この記事は「営業リスト完全ガイド——作り方・買い方・質の見極めを75万社の実データで解説」の一部です。全体像はそちらからどうぞ。
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出典:当社保有の国内企業データベース(約75万社・企業マスタ2026年5月時点)を集計。調査会社による統計ではなく当社データベース上の実測値のため、日本の全法人に対する比率ではありません。営業職募集の比率は、リクナビNEXT・マイナビ転職・エン転職に掲載された求人に基づく概算です。海外ベンチマークの出典:The Bridge Group「2025 SDR Models & Metrics Report」。