2026-09-29|lullaby株式会社 代表取締役 坂口 大晟

MAツール導入企業は約1万社しかない
——国内インバウンド施策の天井を実測する

リードのスコアリングやナーチャリングを前提にしたインバウンド戦略は、MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入を暗黙の前提にしています。しかし、当社が保有する国内企業データベース(約75万社)を集計すると、MAツールを導入している企業は全体の1%程度にとどまっていました。この記事では導入率を実測し、「MA導入企業だけを狙うインバウンド」がどれだけ狭い市場かを確認します。

MAツールの導入企業は、全体の1%程度しかない

まず、Webの基盤となるツールの導入状況と並べて見ます。ホームページの土台であるWordPressや、アクセス解析・SNS運用ツールはすでに広く普及していますが、そこから一歩進んだ「リードを育成する仕組み」であるMAツールの導入率は大きく落ち込みます。

ツール導入社数全体(約75万社)に占める比率
WordPress約33万社約4割
Web分析ツール約20万社約3割
SNSツール約22万社約3割
MAツール(BowNow・HubSpot等)約1万社1%程度
MAツール(Marketing Cloud・Pardot・Eloqua等)約3千社1%未満

ホームページを持ち、アクセス解析やSNS運用まで手が回っている企業は少なくありません。しかし、そこで得たアクセスやフォーム経由のリードを「スコアリングして育成する」段階まで進んでいる企業は、全体のごく一部です。Web発信の基盤はあっても、育成の仕組みまで持つ企業はまだ少数派というのが実像です。

Salesforce系の高度MAは、さらに一段狭い市場

MAツールの内訳を見ると、BowNowやHubSpotのような比較的導入しやすい層に対して、Marketing Cloud・Pardot・Eloquaといった高度MA(Salesforce圏の代理指標として使える)の導入企業は約3千社、全体の1%未満です。これらは大規模なCRM・SFA運用とセットで導入されることが多く、専任のマーケティング体制を前提にしたツール群です。

つまりMA導入企業は、「導入している/していない」の二値ではなく、母集団の1%程度という薄い層の中に、さらに体制の厚い一部が存在するという二段構造になっています。「MA導入企業」を一律のセグメントとして扱うと、実際にはこの内側の差を見落とします。

「MA導入企業だけ」を狙うインバウンドは、母集団が小さすぎる

母集団の実像を重ねると、この1%という数字の意味がはっきりします。当社データベースの母集団は従業員20人未満の企業が約半数を占め、非上場企業がほぼすべてです。専任のマーケティング担当を置く余力がある企業自体が母集団の中では少数側にあり、MAツールの導入率が1%程度にとどまるのは、その延長として自然な結果です。

ここから言えるのは、「MA導入済み企業=マーケティングが強い優良企業」として狙うABM的な戦略は成立しても、それだけでパイプラインの母数を確保する戦略にはならないということです。MA導入企業に絞ったコンテンツマーケティングやウェビナー経由のインバウンドは、最初から母集団の99%を対象外にした施策になっています。

MAツール導入企業だけに閉じたインバウンド施策は、母集団の1%程度を相手にしている。残り99%に届くには、インバウンドを待つのではなく、自分から条件を指定して当てにいくアウトバウンドの設計が必要になる。

到達可能性まで含めて考える——MA有無をICP条件に使う

MAが導入されていない残り99%側の企業には、メールでの継続的なナーチャリングという前提そのものが成立しにくい事情もあります。当社データベースで代表メールアドレスが取得できる企業は全体の約2割にとどまり、MAの主戦場であるメール経由の接点は、そもそも限られた企業にしか設計できません。ICPの作り方を検討する際は、「MAを導入しているか」を条件の一つに加えることで、この1%の層と残り99%の層を最初から分けて設計できます。

  1. MA導入企業(約1%)向け——競合ツールからの乗り換えや、既存の育成フローに乗せる訴求を用意する。母数が小さい分、1社あたりの調査・個別化に工数をかけるABM的な設計が合う。
  2. MA未導入企業(残り約99%)向け——メールでの継続接点を前提にせず、部署直通の電話番号やフォーム経由など、代表メールに依存しない複数チャネルで能動的に届ける設計にする。
  3. 「導入していない」を機会として読む——MA未導入は「マーケティングに興味がない」ではなく、「体制を持てていないだけ」の可能性がある。導入前提の訴求ではなく、体制が無くても回せる代行・実行課金型の訴求に寄せる。

MAツールの導入率という一つの数字は、「インバウンドで待つ」戦略が届く範囲の天井を示しています。この天井を知らずにコンテンツマーケティングだけに投資すると、母集団の1%程度を相手にした施策に工数の大半を割くことになります。

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出典:当社保有の国内企業データベース(約75万社・企業マスタ2026年5月時点)を集計。調査会社による統計ではなく当社データベース上の実測値のため、日本の全法人に対する比率ではありません。MAツールの分類は、汎用MA(BowNow・HubSpot等)と、Salesforce圏の高度MA(Marketing Cloud・Pardot・Eloqua等)を別集計しています。