2026-10-26|lullaby株式会社 代表取締役 坂口 大晟

営業リストの作り方を比べる
——購入・自作・AIディープリサーチを「使える行」で選ぶ

営業リストの作り方を比べる

営業リストの作り方は、「何社載るか」ではなく「そのうち何行に連絡先が入り、いつの情報か」で選ぶのが正解です。購入、自作、AIディープリサーチ(AIが公開情報を調べて企業を拾い、理由まで書く方法)は、強い工程がそれぞれ違います。この記事では3つを母集団・連絡先・鮮度の3点で比べ、最後に30社の試し打ちで決める手順を書きます。全体像は営業リスト完全ガイドにあるので、ここでは「AIに調べさせる」を加えた3方式の選び分けに絞ります。

3つの作り方は、何が得意で何が苦手なのか

先に結論の表です。◎○△は、商談獲得に使える行を作るという目的での筆者の評価です。

観点購入(DB抽出)自作(手作業)AIディープリサーチ
母集団の広さ◎ 条件一つで数万社△ 数十〜数百社○ 条件に合う企業を文脈で拾える
文脈で絞る力△ 登録済みの属性のみ◎ 人が読んで判断◎ ページを読んで判定
連絡先の入り方○ 保有する範囲で入る△ 1社ずつ探す△ 公開されていない番号は出せない
鮮度△ 更新時点で止まる◎ 調べた日が最新◎ 実行した日が最新
件数が増えたとき◎ 単価は下がる× 人手が比例○ 実行量に比例して費用が増える

この表で見落とされがちなのが「連絡先の入り方」の行です。AIは企業を見つけ、選んだ理由まで書けますが、ホームページに載っていない電話番号は、どれだけ賢いAIでも作れません。ここが次の節の主題です。

連絡先の入り方で、使える行は決まる

自社企業データベース(国内500万社以上を網羅。うちホームページ等で活動が確認できる企業を集計)の集計では、連絡手段ごとに取れる企業の割合は次のとおりでした。

連絡手段取得できる割合出典
代表電話番号約50%自社データベースの集計
代表メールアドレス約20%自社データベースの集計
問い合わせフォーム約10%自社データベースの集計

つまり公開情報をたどる限り、リストの半分は電話をかけられず、メールが届く先は2割です。これは購入でも自作でもAIでも同じ天井です。違いが出るのは、その天井にどう近づくかです。

海外のデータ基盤Clayは、この問題を「ウォーターフォール」で解いています。メールや携帯番号を、複数のデータ提供元に順番に問い合わせ、最初に見つかった分だけ費用を払う方式です。同社の記事(Data Waterfalls、2026-04-26)は、単一の大手提供元では携帯・メールの網羅が約30%にとどまるのに対し、順番に問い合わせると約80%以上になるとしています。ただし同記事の数字は同社の検証によるもので、手法や標本数は書かれておらず、第三者による確認もありません。同記事の中の例が示唆的で、ある提供元が返した携帯番号35件のうち30件は別の提供元とすでに重なっており、新しく増えたのは5件でした。提供元を足せば増えるのではなく、提供元どうしの重なりが小さい組み合わせだけが効く、ということです。

日本では、代表電話が無くても営業部の直通番号は取れる企業が約3万1千社あります(自社データベースの集計による)。これは部署直通の記事で詳しく書きました。連絡先の層を足すという考え方は、海外でも国内でも同じです。

AIディープリサーチは、どこまで任せてよいのか

AIに調べさせる方式の強みは、固定の属性では書けない条件を扱えることです。Clayの記事(Continuously find every account in your TAM, at scale、2026-07-28)は、「APACで、ソフトウェアエンジニアが20人以上いる、または5職種以上の採用中の会社」のような文章での検索を公開ベータで提供しています。同記事の例では、欧州・中東・アフリカの約1,600万社から技術者50人以上の企業を絞る作業が、従来は約350の表に分けて数時間かかっていたのに対し、1分未満・費用98%減になったと書かれています。これも同社の一つの例にもとづく主張で、網羅率や精度の数字は出ていません。

ここから読み取れる、任せてよい範囲は次のとおりです。

つまりAIディープリサーチは「誰に当てるか」を広げる道具で、「どこに届くか」を増やす道具ではありません。後者は購入データや部署直通のような、別の層で補います。

どれを選ぶのか——母集団の大きさと条件の書きやすさで決める

状況向く作り方理由
狙う企業が数十社で、全社を深く調べたい自作+AIの下書き件数が少ないので人が読める。AIは調査の時間を減らす用途
条件が業種・規模・地域で書ける購入(DB抽出)属性で書ける条件は、DBのほうが速く安く、連絡先も揃いやすい
条件が文章でしか書けない(「新店舗を出した」「採用を強化している」)購入で絞ってからAIで判定数万社をAIに読ませる前に、属性で数千社に減らして費用を抑える
大量に電話・メールで当てたい購入を軸に、連絡先の層を足すAIが見つけた企業でも番号が無ければ架けられない

3行目の「絞ってから判定」が、実務では最も使い道が広い組み合わせです。AIの実行量が費用に比例するなら、読ませる前に母集団を減らすことが、そのまま費用管理になります。

30社の試し打ちで決める手順

方式の優劣は、自社の商材で試さないと分かりません。次の手順なら、1日で結論が出ます。

  1. 同じ条件文を3方式に渡し、それぞれ30社を出す。条件は「半年以内に営業職を募集した、従業員50〜300人の会社」のように、実際に狙いたい文で書きます
  2. 30社×3方式を、4項目で採点する。①条件に本当に合うか ②代表電話か直通が入っているか ③ホームページで実在を確認できるか ④過去の取引・NGと重なっていないか
  3. 「使える行」の数を数える。4項目すべてを満たした行が、実際に架電できるリストです。30行のうち何行かを方式ごとに並べます
  4. 使える行1つあたりの手間と費用を比べる。行数が同じなら安い方、費用が同じなら使える行が多い方を選びます

この比較で、AIの出力に連絡先が足りない場合は、AIで企業を選び、連絡先は購入データで埋める組み合わせになります。リストの質を全体で見る視点はリストの質がAI営業の成否を決める理由にまとめています。

つまずきやすい点

COMPASS AI のリストは、条件を日本語で指定すると、該当件数と、そのうち代表電話・部署直通が取れる件数を購入前に確認できます。試し打ちの30社をそのまま依頼することもできます。

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この記事は「営業リスト完全ガイド——作り方・買い方・質の見極めを500万社以上の実データで解説」の一部です。全体像はそちらからどうぞ。

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出典:Clay「Data Waterfalls: How to Maximize Contact Coverage with Clay」(2026-04-26)/Clay「Continuously find every account in your TAM, at scale」(2026-07-28)/自社企業データベース(国内500万社以上を網羅。うちホームページ等で活動が確認できる企業を集計。企業マスタ2026年5月時点・部署マスタ2026年3月時点)の集計による。調査会社の統計ではなく当社データベース上の実測値のため、日本の全法人に対する比率ではありません。Clayの数値は同社の検証・主張であり、独立した確認は行われていません。